院長のブログ

解糖系

20190813解糖系

今回は、解糖系という言葉を記憶してください。
解糖系とは、生体内の特定の化学物質が連鎖的に反応を起こして、
最終的にエネルギー物質であるATPを産生する経路です。
まず、生体の細胞の構造を見てください。
細胞は細胞膜という、二重の脂質の膜でおおわれています。
その中に、核、小胞体(タンパク質を合成します)、ミトコンドリアなど様々な
機能をもった組織体があります。
それらの組織体は、細胞基質とよばれる液体の中に浮かんでいます。
解糖系は、その細胞質で行われている化学的な反応系です。図B
がん細胞では、この解糖系の反応が亢進していることが分かっており、
がん細胞の特長とされています。
解糖系は、単糖類の一つであるグルコース(ブドウ糖)を、
ピルビン酸などの有機酸に分解します。図A
その分解過程で、グルコースに含まれる高い結合エネルギーを、
生物が使いやすいATPに変換します。
ほとんど全ての生物が解糖系を持っていて、
酸素の欠乏している状態(嫌気状態)で起きている代謝系で、
生物界においてもっとも原始的な代謝系とされています。
20億年以上も前に有酸素の状態で働くミトコンドリアが、
細胞内に共生し始めました。
それ以前から、解糖系があったので原始的といわれます。
そこで産出されるピルビン酸が、ミトコンドリアに受け渡されることで、
好気呼吸(有酸素代謝)の一部としても機能しています。
(ミトコンドリアについては次回説明します)
図にも示ししてありますが、がん細胞において解糖系が亢進すると、
代謝産物の乳酸が多量に放出されます。
このことが細胞内の環境をさらに悪化させています。
がん細胞は、低酸素の状態で活動できるようにしています。
ある意味で何十億年も前の記憶を呼び覚まして、
低酸素状態に適応しようとしていると言っても過言ではありません。

図A

図B

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