院長のブログ

ミトコンドリアその2

ミトコンドリアは、様々な機能を持っていますが、
中心的で重要な機能は、生体へのエネルギー供給にあります。
前回、ミトコンドリアで生産されるATP(アデノシン3リン酸)が
エネルギー物質であると説明しました。
つまり、ミトコンドリアは、生命体にとっての電池(バッテリー)と言えます。
このミトコンドリアのバッテリーの機能異常が様々な病気や老化に
関係していることが分かってきています。
全ての電子機器が、電池の機能に依存していますが、
電池の機能異常が起きると、様々な機能障害が起きるのに似ています。

p53遺伝子と呼ばれる遺伝子があります。
細胞の中でDNA損傷の修復を行い、細胞増殖を停止させ、
アポトーシス(自爆死)を引き起こすなど、
細胞増殖サイクルの制御する機能を持っています。
また、細胞ががん化したときアポトーシスを起こさせるとされています。
非常に重要な癌抑制遺伝子の一つです。

最近、P53遺伝子に、ミトコンドリアを制御している機能が
あることが分かってきています。
ミトコンドリアに障害が起きると、その障害を修復します。
修復できない場合は、その損傷を受けたミトコンドリアを消滅させ、
ミトコンドリアの品質を管理しています。

さらに、がん細胞においては、そのP53遺伝子の
ミトコンドリアを制御する機能が失われていて、
品質の悪いミトコンドリアが蓄積され、
多量の活性酸素種(ROS)が生産されていること、
その活性酸素種が、がん細胞の転移能、浸潤能などの
悪性化を促進していることが分かってきています。

がん細胞の悪性化の根源は、ミトコンドリア(バッテリー)の
機能損傷、機能異常といっても過言ではありません。
電子機器の電池が老朽化し酸化して、内容物が噴き出ているイメージを
抱いてもいいのではないかとさえ思います。

これらの研究から分かることは、
がん細胞の悪性化を抑制するためには、
異常なミトコンドリアを制御すること、
そこから発生している多量の活性酸素種を排除することなのかも知れません。

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